ダーツは生地を調整し体の曲線に合わせるために使われる洋裁技術の一つです。服のシルエットを整え、フィット感を向上させるための大切な手法です。
ダーツを取り入れることで平面の生地が立体の洋服に変わります。ダーツは「布地を洋服に変える」ことです。
このダーツを正しく理解し目的によって使い分けることで良い型紙を作り、更に良い服作りをすることができます。
今回は「ダーツ」についてご説明致します。
すみませんが…
「ダーツ」って何んですか?
簡単に言うと布の一部を摘んで、三角形に縫ったつまみ縫いのことです。
「ダーツ」って何?
フィット感と立体化、そして、美しいシルエットを作り出すテクニック 「ダーツ」
洋服のダーツは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、よりフィット感のある服を作るために一般的に使用されるようになりました。具体的な時期や人物に関しては明確な記録はありません。流行の変化や衣服製造技術の進歩によって、ダーツが広く使用されるようになったと考えられています。
ダーツとは
人の体は立体です。人の体を側面から見るとよく分かります。
⑴ 胸の膨らみ・お腹の膨らみ・背中の肩甲骨の膨らみ・お尻の膨らみがあります。
⑵ この膨らみを生地上に形どり、身体の自然なシルエットを作り出すことがダーツの役割です。つまり、ダーツとは平面の生地を立体に変化させることです。
型紙のダーツと数学の関係性
洋服の型紙は数学の幾何学に属します。ダーツは数学的に説明すると円錐形を作ることです。
⑶ 円錐形とは円を底面として持つ錐(きり)状にとがった立体のことです。赤い三角形の面積を畳むと円の中心点上にとがった形に変化します。
⑷ ⑶の行為を平面な生地上で行うことがダーツです。赤い三角形の面積をつまむと錐状にとがります。
生地上に三角形(Vの字)をつまみ縫製することで、生地を立体化し身体に合わせた洋服を作ることが出来ます。
ダーツの基本
ダーツは縦のライン(A)を中心線として、両サイドのライン(B).(C)の三角形で表現します。
ダーツは縦の中心線(A)をはさみ、両サイドライン(B).(C)は同寸、同分量が基本です。
ダーツの重要性と効果
ダーツは洋服制作において、基本的かつ重要な技法でデザイナーや製作者が服のシルエットやフィット感、立体感を作り出すために使用します。また、洋服を着やすく、美しく見せるための欠かせないテクニックです。
ダーツの重要性 ① (後ろからの姿)
ショルダーダーツを正しく取り入れた側(右側・青線) 肩の位置から下に向かって真っ直ぐに生地が落ちています。裾周りも体に沿って綺麗なカーブ線を描いています。
ショルダーダーツが無い側(左側・赤線) 肩の位置から下に向かって「ハ」の字に縦ラインが入っています。それに従い裾周りのカーブ線もいびつなカーブになります。
ダーツは正確な位置に、適切な分量・長さを取ることにより生地の歪み(いがみ)なくし、洋服らしい形に変化させています。
ダーツの重要性 ② (側面の姿)
ショルダーダーツとバストダーツを正しく取り入れたボディを側面から見ると、体に寄り添った形に生地が変化します。
後姿の肩甲骨の丸みから肩の丸み、肩からバストにかけてのフィット感など、自然な流れが生地上に表現できています。
また、バストトップから下に真っ直ぐ生地が落ちています。 ショルダーダーツ先から下に真っ直ぐ生地が落ちています。この真っ直ぐ下に落ちるラインが美しい服のシルエットや形を作り出しています。
コルセットとダーツの違い
コルセットは硬い素材、ボディシェイパーで腰や胴部を包み込むように装着します。背中からウエストにかけて、ハトメ穴に紐を通し絞ります。
ウエストを引き締め身体の形を変えることができますが、着用していない状態では効果がありません。
ダーツは、服のパターン作成や縫製に使用されるテクニックで、生地に三角形を入れて、身体の膨らみに合わせて生地を立体化させます。
ダーツはコルセットのように身体に直接圧力をかけるわけではありません。裁縫を通じて服の形状を調整し、ウエストを絞る効果を持たせることができます。
ダーツ種類
洋服には大きくわけて4つのダーツがあります。
- バストダーツ 胸の膨らみを作る。
- ショルダーダーツ 背中の肩甲骨の膨らみを作る。
- 前ウエストダーツ お腹周りの膨らみを作る。
- 後ウエストダーツ お尻の膨らみを作る。
他にも、袖のダーツ、ウエストのサイドダーツ、など沢山ありますが、今回は上記の4つのダーツについてご説明致します。
ダーツの特長
ダーツは折りたたむ面積や長さによって違いが生じます。
ダーツ面積
折りたたむ面積が大きいと錐状の高さが高くなります。 底面の直径が短くなります。
折りたたむ面積が少ないと錐状の高さが低くなります。 底面の直径が長くなります。
ダーツの長さ
ダーツの三角形の高さが短いと角度が鋭角になる。
ダーツの三角形の高さが長いと角度が鈍角になる。
ダーツは形状の長さや面積の大小により出来上がる立体感は違います。このできダーツの特長を組み合わせて体の膨らみに寄り添う洋服をつくることができます。
ダーツの方向
ダーツの方向はダーツの先端(先の部分)が山側、体の高い場所に向かうようにします。高い場所に向かうにつれダーツ面積が少なくなります。
各ダーツの説明
ダーツの特長を組み合わせ各部位のダーツを作る
ダーツの分量は個人差があります。今回は平均的なボディで考察します。
前ウエストダーツは同じ大きさ・同じ長さ
前ウエストダーツは側面から見たら、ウエストとお腹の隙間(差)は小さい。お腹の膨らみは均等に丸みがある。前ウエストダーツは均等の面積と同じ長さのダーツを組み合わせが適切。
後ウエストダーツは中心線側は大きく・長く 脇側は小さく短く
後ウエストダーツは後ウエストポイントとヒップポイントの差が大きい。側面から見るとダーツ分量が多くなります。後ウエストダーツは面積を多く、長く取るダーツと、普通のダーツを組み合わせてヒップの膨らみを作ります。
ショルダーダーツは小さく・短く
背中の肩甲骨の膨らみを形作るのがショルダーダーツです。ショルダーダーツは肩甲骨のトップと肩の差が小さく長さも短いです。
ダーツを取らず、生地にイセとして取り込んだりもしますが、ショルダーダーツをしっかりと意識し型紙に反映させることが良い型紙を作るのに大切なことです。
バストダーツは大きく・長く
女性の胸の膨らみを作るのがバストダーツです。女性の美しさを表現する大切なダーツです。肩線からバストトップにかけてダーツを取ります。 ダーツ分量は大きく、長く取ります。
バストダーツは洋服を作る上で重要なダーツです。洋服のデザインに合わせて、このバストダーツを展開して理想の形、デザインに近付けていきます。
ダーツの描き方とダーツの縫い代付け方
ダーツを型紙に書き込むと下記のようになります。
ダーツの描き方
- 縦ライン A
- 左ライン B
- 右ライン C
3つのラインでダーツを作ります。
Aラインを中心線としてBラインとCラインを合わせます。これが「ダーツを折り畳む」ことです。
ダーツを折り畳むとラインがくの字のように凹みます(赤ライン)。これはキレイなラインでなく、補正・修正します。ダーツを折り畳んだ状態で繋がり良いラインを引き直します(青ライン)。
補正(修正)線を描き直したダーツを開くとBラインは斜めに上がります。また、反対側、Cラインは斜めに下ります。そして山の形ができます。これが型紙上のダーツの正式な製図です。
このダーツ線に対して平行に縫い代を付けていきます。ダーツパターンの完成です。
ダーツ製図のマル秘テクニックご紹介
ダーツのB・Cラインを直線でなく、曲線(カーブ線)で描き、縫います。カーブ線にするとより一層体にフィットしたカーブラインとなり洋服の仕上がり度が良くなります。
ダーツの縫製・処理の仕方
ダーツの縫製
ダーツの真ん中の中央線が折り線、左右の線が綺麗に重なるように生地を合わせます。三角形の左右の辺が縫い線になります。左右、上下がズレないように合わせミシンなどで縫い合わせます。
ミシンのかけ方はダーツの先端からミシン針を落とし、縫い始めます。この時返し縫いはしません。
ミシンで縫い終わったら、ミシン糸始末します。返し縫いしていないのでダーツの先端で糸を結びます。残った糸は針に通してミシン目にかがり縫いをしてきいます。5~6目かがり縫いし、糸を切ります。
ダーツの縫い代処理
縫い終わったダーツの縫い代にアイロンをかけます。
薄い生地の場合 縫い代が脇側に倒れるようにします。アイロンをかけます。
厚い生地の場合 ダーツのワサ(中心線)をCUTします。 真ん中を割りアイロンをかけ両開きします。 ダーツ先端は切らず、アイロンで先を潰すように押さえて整える。
生地が厚い場合、片側に倒すと生地の厚みが出て均等になりません。均等にするためダーツの「ワサ」を切り両開きにし厚みを均等にします。
次回は「ダーツ展開」についてご説明します。
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