洋裁には、平面裁断と立体裁断があります。今回は平面裁断による型紙・パターンをご紹介致します。
立体裁断は、ボディ(人台・ドレスフォーム)に布を当てて立体的に型紙を作る作業 平面裁断は、紙の上で寸法を基に型紙を作る作業 平面作図とも言います。
型紙とは
型紙とは、何かを作るための「型」・「原型」となる切り抜かれた紙のこと
染色、洋裁、手芸などで用いられています。 洋服やカバン・靴などを作るのに必要な型の布や革等を得るために、定められた方法で計算し、特定の型を紙上で定規を用いて制作し、その型の周りを切り抜いた紙のことです。
その「型紙」を材料に押し当てて型紙の周囲をペン等でなぞることで、得ようとする型の線を材料の上に引くことができ、その線に沿って材料(布など)を切り抜くと、作りたい物のある部分(パーツ)を原寸大で得ることができます。
この切り抜かれた部分(型)を合わせていくと作りたい物が仕上がります。
洋裁における型紙とは
洋裁における型紙は、洋服を作るための部分・パーツであり、洋服の設計図でもあります。
作りたい洋服、または、デザイン画を基にしてパターンを作成します。 作るアイテムよって、また、パーツごとにパターンの形は様々です。 初心者の方は、パターンのパーツだけを見てもそれが洋服のどの部分か判断するのは難しいかもしれません。 その為どの様に組み合わせていくかも考えてパターンを作成することが大切です。
パターンを作図するには作図方法があり規則があります。 作りたい洋服の寸法を色々な尺(サシ)を使い紙の上に作図していきます。 パターンにはパターン用語がありこれらを理解し覚える必要があります。 そして規則を守り作図していきます。
型紙の長所と短所
型紙は、同じ形のものを何度も作ることができます。それにより生産効率をアップすることができます。また、服を作る上での設計図の役割も果たします。 サイズによって型紙を変えることも簡単です。
しかし、平面なのでドレープやギャザー分量などの立体感、ポケットの位置などイメージしづらいです。
型紙の作成方法と入手方法
型紙の種類を大きく分けると
- 型紙なし
- 囲み製図
- 洋服を解きパーツに戻し、パーツの型を写しとる
- 洋裁の本に記載、又は付録の型紙を写す
- 販売購入・ダウンロード
- 自分で製図する
型紙の入手方法は手芸店で販売されているものや書店・図書館に並ぶ洋服作りの本に記載または、付録付きもあります。近年では様々な型紙を無料でダウンロードできるサイトがいくつも存在しています。
しかし、自分に合った洋服作りをするなら、自分の考えたデザインの服を作りたいなら、ご自身のサイズを測り一から型紙を描くことをお勧め致します。
ここでは、伊東式パターンの型紙製図をご説明致します。
伊東式パターンとは
洋服の製図には、文化式、ドレメ式、囲み製図などいろいろあります。どの製図方法でも、それぞれの特徴があり、また利点・欠点もあります。
伊東式パターンの特徴と利点・欠点もお伝え致します。
特徴1 分量比率
伊東式パターンはバストサイズを基本寸法とし、「バストサイズ」に「ゆるみ」(衣服と身体の空間)を加えた分量比率で肩幅・バストダーツ分量・アームホール、S,S(サイドシーム) S,G(サイドガイドライン)などを決めていきます。 これにより、美しいシルエットラインを構築します。
なぜ「バストサイズ」に「ゆるみ」(衣服と身体の空間)を加えた分量比率でパターンを作成するのか?
ファッションモデルや、女優・アイドルのように美しいプロポーションとは限りません。着やすく、自分の体型に合わせすぎた洋服は、美しいシルエットの洋服とは限りません。
また、サイズは9号・Mサイズなのに、身長が高く着丈や袖丈、パンツ・スカート丈が合わない、など人によってスタイルはさまざまです。 既製品は幅広い平均的な人達を対象にしているので合わない方々が多いです。
私も決していいスタイルではありません。
伊東式パターン製図は、その方の「バストサイズ」に「ゆるみ」(衣服と身体の空間)を足した数値を基に計算し配分することで、その方に合ったサイズでその方に合ったバランスの良いシルエットの服を作ることが出来ます。
でも…
B/6・B/8など、細かい数値を計算することが多いため嫌われています。
B/6やB/8とは、「バストサイズ」に「ゆるみ」サイズを加えた数値の1/6 ・1/8 という意味です。
以前は、伊東式専用のサシが販売されていましたが、現在のところ販売されていないようです。なので計算しなくてはなりません。
しかし!
この分量比率こそが美しいシルエットラインには必要なんだぞぉ
特徴2 立体を考えたダーツ展開
伊東式パターンには、「前下がり」 はありません。
前身頃のバストダーツ、後身頃のショルダーダーツをパターン内に描きます。 このダーツをとることにより胸の膨らみや背中の肩甲骨の膨らみを立体化します。 また、デザインに合わせてダーツ展開をしプリンセスラインの切り替え線やギャザー分量・フレア分量に変更します。
ダーツ展開をすることで「前下がり」は必要ありません。
しかしながら、このダーツ展開が数学の図形展開と同じで、初心者の方には分かりづらいです。
でもダーツ展開が出来ればパタンナーに近づくよぉ〜!
「ゆるみ」とは
「ゆるみ」「緩み」 体と衣服の間がどれぐらい空いているか、を示す言葉です。
「ゆるみ」の数値が小さいほど身体と衣服の空間がなく、「ゆるみ」の数値が大きいほど身体と衣服の空間が大きく空いていることを示します。
伊東式パターンでは、ご自身のヌードサイズに「ゆるみ」を加えた数値を基に計算し、原型の型紙を描いていきます。
「ゆるみ」数値の目安となる考え方は大きく分けて4種類です。
- 身体にフィットした洋服 ドレスやインナー
- ブラウス類 (ジャケットの中に着る)
- ジャケット類
- コート類
作る洋服によって「ゆるみ」の取り方が変わってきます。
伊東式パターンはゆるみを含めて原型を描いていきます。 そのため、作るアイテムによって「ゆるみ」が違うのでウエストスローパーの原型は最低でも4型(4種類)必要になります。
一度作った原型型紙は何度も使えるよぉ〜
Bサイズの計算方法
伊東式パターンは、ご自身 (または、着られる方の) バストサイズに「ゆるみ」を加えた数値を基に計算し、パターンを作成します。
B 設定 計算方法
B = バストサイズ(ご自身のバストサイズ) cm +「ゆるみ」cm × 1/2
(例) 洋服を着られる方のバストサイズが82cm で、中肉のウール地(厚み約0.5mm)ぐらいの生地でジャケットを作る場合、「ゆるみ」4cmとすると、
B = 82cm + 4cm × 1/2 = 43 B=43 となります。
つまり、B/8 とは、43÷8=5.375cm 小数点第1までと考えて B/8 は5.3cmとなります。
製図に必要な道具
型紙を製図するために必要な道具を説明します。
- カーブ尺 (大)
- 伊東式尺
- 方眼尺
- カーブ尺 ( 小 )
- シャープペンシル ( 0.3mm・0.5mm・0.9mm )
- コンパス
- 分度器
- プッシュピン
- メジャー
- 三角定規
伊東式尺について
特殊な尺です。表面は普通の尺ですが、裏面は1/32・1/24・1/16・1/12・1/8・1/6・1/4・1/3・1/2と数字が記入されています。
(例) B=43 と設定します。 B/8 (43÷8) の長さを取りたい場合
- 伊東式尺の最端を 0 (基点)とします。
- 尺の1/8部分を探します。
- 1/8部分の43を探します。 その地点をチェックします。
- その地点が 43÷8 = 5.3cm の長さになります。
この尺を使用すると計算しなくても、簡単に長さが測れます。 しかし、現在この伊東式尺は販売されていません。
型紙(スローパー)に使用する用語
型紙(スローパー)に使用される用語があります。 型紙用語の説明を致します。
- C,B センターバック 後背中心線
- C,F センターフロント 前中心線
- S,S サイドシーム 脇線
- B,S,G バックサイドガイドライン このラインを境に人体の側面になります
- F,S,G フロントサイドガイドライン このラインを境に人体の側面になります
- B,L バストライン 胸周り
- W,L ウエストライン 腰周り
- H,L ヒップライン お尻周り
- APEX エイペックス バストポイント
- バストダーツ 胸の膨らみをダーツを取って立体化します
- ショルダーダーツ 肩の肩甲骨の膨らみをダーツを取って立体化します
- ショルダーライン 肩線
- アームホール 袖ぐり
ウエストスローパー原型の描き方
ウエストスローパーとは
ウエストスローパーとは、ウエストラインより上、上半身(身頃のみ)の型紙です
ウエストスローパーの原型は、ジャケット・ブラウス・ワンピース・ドレス・コートなどの型紙を描くのに使用します。また、ウエストスローパーのアームホールを使って袖の型紙を描きます。洋服を作るための基本となる原型型紙です。
型紙は、後半身と前半身を描きます。 型紙を生地上に置き裁断する際、生地を二重に重ねるため半身のみ描きます。
B設定をする 背丈・胸下を測る
- あなたのバストサイズを測ります。
- あなたの作りたいアイテムの「ゆるみ」何cmするか、を決めます。
- 先程の計算方法でBの値を求めます。
- B = バストサイズ(ご自身のバストサイズ) cm +「ゆるみ」cm × 1/2
- あなたの背丈 (首の付け根からウエストラインまでの長さ) を測ります。
- あなたの胸下 (バストトップからウエストラインまでの長さ) を測ります。
さぁ始めましょう。
一見難しそうですが、一つ一つ丁寧・確実に描いていけばあなたのオリジナル型紙が出来上がりますよ!
後身頃ウエストスローパー 原型の描き方
⑴ 用紙に横ライン(直線)を引きます。 この横ライン上に B+B/6 の長さを取る。
⑵ ⑴の横ラインより下に直線(直角)を引きます。
- 左側がC,B(センターバック) 、右側がC,F(センターフロント)になります。
⑶ (2)の縦ライン (左側) 上に、B/20 の長さを取ります。
- B/20の地点に横ライン (直角) を引きます。
(4) C,B(センターバックライン) 後背中心 ・ ウエストラインを描きます。
- (3)の縦ライン上、B/20の位置から下に背丈(今回は38cm)を取ります。
- この縦線 (38cm)がC,B(センターバックライン・後中心線)になります。
- 背丈を取ったところから、横線(直角)を引きます。これが、ウエストラインになります。
⑷ バストラインを引く
- ウエストラインから上に向かって 胸下(今回は16cm) を取る。
- 胸下 (16cm)地点から横ライン(直角)を引く これがバストラインになります。
⑸ ウエストライン上に B/3+B/12+0.5cm の長さを取ります。(0.5cmは前後差)
⑹ B.S.Gラインを引く
- その地点から縦ライン(直角)を上に向かって引きます。
- このラインがB.S.G(バックサイドガイドライン)です。 このラインを境目に側面になります。
⑺ (1)の横ライン(B+B/6)上に、B/6の長さを取ります。
- (3)のB/20地点と (7) B/6地点をカーブ線で描きます。 後ネックラインになります。
- C,B (後背中心) と B/20 は直角にします。
⑻ 後肩線を引く
- (6)のB,S,G(後ガイドライン)上にB/10の長さを取ります。
- ⑺の後ネックポイントから⑻のB/10地点を通過するラインを引きます。
⑼ 肩先を出す
- 後肩線 と 後ガイドライン(B,S,G)上の⑻B/10の位置のクロス地点から1.5cm肩先を出します。
⑽ (6)後ガイドライン(B,S,G)上に、(8)B/10地点から下に B/4 の長さを下に取ります。
- B/4の位置から横ラインを引きます。
- C,B 後背中心線と直角になるように横ラインを引きます。
(11) B,S,Gライン上の (10) B/4地点から下に、B/6の長さを取ります。
- B/6地点から横ラインを引きます。
- 横ラインは右側に向かって引きます。 このラインが袖底ラインとなります。
(12) 同じくB,S,G上に、(10)B/4の位置から1.2cm下がり横ラインを引きます。
- この横ラインが後袖山ラインとの合印です。
(13) 後袖底ライン上にB/6の長さを取ります。
(14) (13)のB/6から下へ縦ライン(直角) を引きます。
- ウエストラインと交わるよう、直角線を引きます。
- このラインがS,S(サイドシーム)で、後身頃と前身頃の境目になります。
後身頃のアームホールを描きます。
- アームホールはコンパスで描く円周ラインを使用します。
- コンパスでB/6の長さを取ります
- (12) の地点からB/6の長さを取った地点に円の印を付ける(青線)
- (13) の地点からB/6の長さを取った地点に円の印を付ける(赤線)
- 赤線と青線がクロスした地点を中心点としてB/6の長さの円を描きます。
- 後肩線(9)から袖底に向かって後ろアームホールをカーブ線で描いていきます。
- 赤三角印を通って描きます。 B,S,Gより内側にアームホール線が入らないように注意して下さい。
アームホールをカーブ線で描くのは難しいけど…頑張ろぉ
(15) 後ろアームホールが描けたら、後ろ肩線の上にダーツを描く。
- 後ろ背幅のライン上にC センター(中心)を取ります。
(16) (1)のライン上に (7)のB/6の隣に、B/8の長さを取ります。
- (16)の位置から(15)のセンター C に向かってラインを下に引きます。
- 肩線と (18) の直線の交わった(クロス)位置から、そのライン上にCセンター(1/2)を取ります。
(19) (18)から1cmの長さを取る。
- 肩ダーツ分量になります。
- 1cm空けたところから(17)のセンターと直線で結びます。 これが後肩ダーツになります。
- 肩ダーツ線、(18) と (19) の直線を同寸法にします。
- 同寸法にするには、コンパスを使用して同じ長さになるようにしましょう。
- (18) と(19) のラインの長さを比べると、若干(19)のラインが長くなります。
- 後肩ダーツ分量を折り畳み、後肩線を新しく引き直します。
- ダーツの中心部で少し盛り上がったラインになります。
後身頃ウエストスローパー原型の完成です。
次は前身頃だぞぉ!
前身頃ウエストスローパー 原型の描き方
前身頃ウエストスローパーの原型の描き方に進みます。
(20) ウエストライン上にB/3+B/8-0.5cmの長さを取ります。
- 0.5cmは前後差です。 (前身頃は-0.5cm , 後身頃は+0.5cmの前後差を付けます。)
(21) ウエストライン上の(20)の位置から上に直線を引きます。
- この線がF,S,G(前サイドガイドライン)になります。
- 後身頃の(14)S,S(サイドライン)と接したラインが前身頃S,S(サイドガイドライン)になります。
(21) F,S,G上にB/12の長さを取る。 (22) 同じく F,S,G上にB/10の長さを取ります。
(23) 最初に引いた(1)のラインより1cm上に新しく横にラインを引きます。
- 1cm上に上げたラインからB/6の長さを下に取ります。
(24) (23)で1cmを上に上げた縦ラインから横にB/6を測ります。
- (24)の地点から(23)の地点までカーブ線で前首ぐりを描きます。
- 前バストライン上に、C,FとF,S,Gの間にC (センター) 中心を取ります。
- この中心点をAPEX(バストポイント)とします。
(25) (24)の位置からAPEXの位置へラインを引きます。
(24) 誤: バストサイズの1/10の分量
正: バスト(サイズ1/2)×1/10
- (24)からバストサイズの1/10の分量を前身頃のダーツ分量とします。
- (25)の位置からAPEX位置にラインを引きます。
- このVラインが前身頃のバストダーツになります。
- 前身頃バストダーツを折り畳むと小さなVの字になります。
(26) 前肩線を引く
- (25)の位置とF,S,G(フロントサイドガイドライン)上の(21)B/12の位置を通過する直線を引く。
- このラインが前肩線になります。
(26) 前肩線ライン上に後肩線と同じ長さを取る。
- 前肩線の長さと後肩線の長さを同寸法にします。 後肩線は肩ダーツの分量を引いた長さです。
- 後肩線と前肩線のを同寸法にするにはコンパスを使います。
- 後肩線🅰️の長さを測り前肩線上に取ります。
- 次に、後肩線🅱️をコンパスで取ります。
- 前肩線の🅰️の地点から🅱️の長さを付け足します。
(26) 前肩線の肩先から前身頃のアームホールを描いていきます。
いよいよ前アームホールだぞぉ!
ちょっと難しいけど頑張れ。
(26) 赤い三角形の位置はF,S,G(前身頃サイドガイドライン)と接するようにラインを引きます。
- 青三角形はF,S,Gと2~3mm離れ、F,S,Gより内側にカーブ線を描きます。
前アームホールは後アームホールより少し抉りますよぉ。
- 後アームホールラインと前アームホールライン上に合印を入れます。
- 前アームホールの合印は1本線を引きます。
- 後アームホールの合印は2本線を引きます。
前身頃パターンの完成です。
お疲れ様でした。
伊東式パターン ウエストスローパー原型の完了です。
初めてご覧になった方は驚かれたかもしれません。 市販の洋裁本に掲載されている型紙や文化式やドレメとも違い、伊東式は難しく・複雑です。
少しでもご理解頂けるよう細かく説明図を描きました。そのため、説明図の枚数が多くなりましたが、初めての方でも必ず描けるようになっています。
原型型紙を描くのは大変ですが何度か描くと慣れてきます。また、一度作った原型型紙は何度も使えるので、是非チャレンジしてみて下さい。
最後までご覧頂きありがとうございました。
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