深まりつつある秋から少し肌寒く冬がそろそろ近づいてくるこの時期、コートにはまだ早くブラウスだけじゃちょっと寒い。そんな季節にあなたの魅力を引立ててくれるコーディネートアイテム『ジレ』
シンプルな洋服にさっと羽織るだけでコーディネートの完成度を高めます。
この『ジレ』をフェイクファー素材で作ることによりエレガントでラグジュアリーな雰囲気を持つアイテムに変身させることができます。
フェイクファー生地は通常のウール地や綿素材とは違う裁断や縫製方法があります。また、ファーの特徴を生かしたパターン(型紙)やデザインが必要です。
扱い方が大変なところもありますが、シンプルデザインの『フェイクファージレ』なら初心者の方にも意外と簡単に作ることができます。
今回は秋冬コーディネートアイテム 『フェイクファージレ』 の作り方をご紹介いたします。
今回はフェイクファー素材でジレを作ります。
秋冬の日常を華やかに彩るコーディネートファッションを楽しみましょう。
洋服を作るプロセスには忍耐と熱意が必要です。その過程を経て完成した洋服には大きな達成感と喜びが舞い上がります。
素材の選定からデザイン・型紙の構築、縫製へと道のりは長いですが、自分の手で作り上げた洋服を身に纏う瞬間を夢みて一緒にソーイングを楽しみましょう。
フェイクファージレ作り方 作成工程表
フェイクファージレを作るための工程を確認しましょう。大きく分けて4工程です。
次に、それぞれの工程作業の詳細です。
今回は、この3項目を重点に解説いたします。
- B-3 パターンを「一枚パターン」にする
- C-4 フェイクファーの裁断・縫い代作り方
- D-4 ジレの肩線の縫い方
さぁ~はじめるよぉ!
A フェイクファージレのデザインを考える
A-1 デザインを考える
羽織るだけでおしゃれ度アップ
フェイクファージレはさっと羽織るだけでコーディネートファッション力がUPします。
フェイクファージレは存在感が強いため、他のアイテムはシンプルでベーシックなデザインのトップスやボトムスと組み合わせたり、フェイクファーの柔らかい質感に対して、他の素材感とのコントラストをつけて全体のバランスが良くなるコーディネートをお勧めします。
【① 着丈68cm】
長いロング丈・腰ぐらいのショート丈など、ジレの丈の長さにもよって着こなしの印象は大きく変わりますが、今回はヒップ丈のジレを作りパンツ・ロング&ショート丈スカート・ワンピースに合うコーディネートを提案します。
【② シンプルデザイン】
フェイクファーは素材が個性的で縫製も通常の生地と違うところもあるので簡単に縫製できるようシンプルなデザインにしましょう。
【③ 並毛】
ファーの毛並みを並(なみ)毛にし、手触りの良さ・光沢感を出しエレガントな装いにも、カジュアルな装いにも合うフェイクファージレを作ります。
着こなしが単調になりやすいワンピースに組み合わせるのもおすすめ。ジレが加わったことでワンピースコーデにおしゃれな印象を与えることができます。
普段からシンプルなTシャツやパンツなどがお好みという方は、そこにジレをプラスするだけでイメチェンが完成します。
白を基調にしたワンカラーコーディネート、それぞれのアイテムの素材感の違いを利用したファッションセンスの高さをアピールできます。
ショート丈のスカートとロングブーツに合わせカワイイらしさも表現できます。
本格的に寒くなってきたら、コートの中に着ることで温かさとおしゃれ度がアップします。
A-2 材料をそろえる
- 表地 フェイクファー アクリル100%
- 裏地 ベンイリアAK1200 (キュプラ100%)
- 糸 シャッペスパン #60
- スプリングホック No,3 3ケ (スプリングホックはお好みでお付け下さい)
今回使用するフェイクファー生地は土台となるメッシュ地が伸びません。フェイクファー生地を初めて縫製される方(初心者様)はメッシュ地が伸びない方を使用することをお勧めします。
裏地はツヤとハリのある丈夫で、秋・冬向けのベンイリアを使用。中肉タイプの裏地をお勧めします。
ミシン糸について
- フェイクファーの土台となる生地が伸びない場合 ミシン糸 『シャッペスパン』#60
- フェイクファーの土台となる生地が伸びる場合 ミシン糸 『デジロン』 をご使用下さい。
フェイクファー縫製のための準備品
使用する生地がフェイクファーなのでカットした毛がゴミとして出ます。お部屋を汚したり、鼻や口に入るのを防ぐためにも、ゴミ袋・マスク・クシ・掃除機を用意しましょう。
フェイクファーのお洗濯について
洗う時は「おしゃれ着用洗剤」を使い身頃を裏返して洗濯ネットに入れましょう。 手洗いでやさしく洗い仕上げには必ず柔軟剤を入れて下さい。 また脱水時間は短くしてください。
干すときはタオルなどで毛並みを起こし形を整えてから陰干しするとふんわり感を保てます。
B フェイクファージレの型紙を描く
仕上がり寸法からの囲み製図
まずは、サイズを確認してね!
洋服(ジレ)の仕上がり寸法です。今回は9号・Mサイズを目安に作っています。
B-1 ウエストスローパー 原型を描く
自分のサイズに合う洋服をつくるには、洋裁に興味があるなら、ぜひ原型パターンを描くことをお勧めします。最初は難しく、大変かもしれませんが、完成度の高い洋服を作ることができます。
まずは身頃の原型パターン、ウエストスローパーの原型型紙を描きましょう。羽織りタイプのジレなのでユルミ3~4cm前後で原型を描きましょう。
B-2 デザインにあわせて原型型紙を展開する
原型パターンを基に、デザインにあわせてパターンを展開していきます。
後身頃のパターンからはじめるよ!
展開する部分を囲む
- (1) ショルダーダーツの先端の位置から後アームホールに向かって横線を引く。
- この線からアームホールの上線→肩線→ダーツ線で囲む四角形を作る。
後ショルダーダーツを展開する
- (2) ショルダーダーツの先端にピンを打ち、ピンを中心点として青線で囲まれた四角形を首ぐり側に回転させる。
- 回転させた後は赤線のような図形になります。
- ショルダーダーツの面積をなくします。
肩線を描きなおす
- (3) 面積を移動(回転)した後の肩線を新しく引きなおす。
- 肩ダーツの分量が後アームホール(袖ぐり)に移動し袖ぐりのゆとりに変わります。
後袖底を下げる
- (4) 後袖底を2cm下げる。
新しくアームホールを描きなおす
- (5) 新しい肩線から袖底を2cm下げた位置まで新しくアームホールを描きなおす。
次は前身頃だよ!
展開する部分を囲む
- (6) 前アームホールのクロスマークからAPEX(バストポイント)に直線を引く。
- この線からアームホールの上側→肩線→バストダーツ線で四角形を囲む。
前バストダーツを展開する
- (7) APEX(バストポイント)にピンを打ち、このピンを中心点として青線で囲った四角形を前首側に回転させ、赤線の四角形のように首ぐりにつけます。
- バストダーツ分量をなくします。
肩線を新しく描きなおす
- (8) 新しく肩線を描きなおす。(後肩線と同寸にする)
- 前アームホールが2つに分かれ、バストダーツの分量がアームホールに移動します。これをダーツ展開と言います。
袖底を下げる
- (9) 前身頃の袖底線を2cm下げる。
新しくアームホールを描きなおす
(10) 新しく描きなおした肩線から2cm下げた袖底まで、新しくアームホールを描きなおす。
パターン展開終了
着丈とデザイン線を入れる
- (12) 着丈を決める。(今回は68cm) 着丈はお好みでお決め下さい。
- (13) 後首ぐりのデザイン線を入れる。
- (14) 前首ぐりのデザイン線を入れる。
- (15) 前裾ラインのデザイン線を入れる。
肩線と首ぐりを描き直す
- 【A】前身頃の肩線と後身頃の肩線を合わせます。
- 【B】前首ぐりと後首ぐりの繋がりがよくなるように描き直します。
- 【C】前アームホールと後アームホールが滑らかに繋がるように描き直します。
B-3 一枚のパターンにする
パターンを一枚パターンにする
- (16) 後身頃のC,B(センターバック)を中心線(ワサ)にして一枚のパターンにする。
- 縫い代1㎝にしてパターンに描き込む。
パターンを「わさ」にして一枚パターンにする理由
- フェイクファー生地を「わさ」にできないのでパターンを「わさ」にする。
- 脇線も縫製しないので縫製回数を減らすことができます。
- 完成したパターンは表地裁断にも裏地裁断にも使用できます。
表地パターンと裏地パターンは同じだよー!
C フェイクファー 生地を裁断する
C-1 生地に型紙を置き裁断する
毛並みを並(なみ)毛にする
上から下に撫でると滑らかでスルーとした手触り感があります。これが並(なみ)毛状態です。並毛は毛が下を向くので光を反射し少し白っぽく見えます。今回のジレは上から下への並毛にして、光沢感のあるファーにし裁断・縫製します。
- パターンは生地の上部に首側、生地の下部に裾側になるように配置します。
- 生地の裏面(メッシュ地)にパターンを置きます。
- 生地の地の目方向とパターンの地の目方向を平行します。
- まち針でパターンを固定します。まち針で深く生地を刺さずに、メッシュ地とパターンをとめるようにしましょう。(深くまち針を刺すと寸法が狂うので注意しましょう。)
フェイクファー生地 裁断の仕方
フェイクファー生地を裁断する時は表地から切らず、裏面から切ります。表面から切ると毛並みを切るので多くの毛のゴミが出ます。また、縫製後毛並みが途中で切れたり、毛並みが自然な感じで続かず、美くしい仕上がりになりません。
フェイクファー生地の土台となるメッシュ地をカットします。生地の裏側からメッシュ地のみをハサミの刃先を細かく動かし少しずつメッシュ地を切っていきましょう。
一枚パターンのため、この様な裁断となります。
C-2 生地に印を付ける
縫い合わせるときの合印を切りしつけにて入れていきます。印の場所は縫製時に合印になるところです。裏側のメッシュ地に切りしつけをします。深く針を刺さずメッシュ地だけに付けましょう。
C-3 裏地を裁断する
次は裏地の裁断の仕方だよぉ!
裏地の型紙(パターン)は表地と同じ型紙を使用します。
裏地の裁断の仕方
本来なら裏地の地の目通り縦にして裁断しますが、今回は縫製し易さを考慮して地の目を横にとり裏地を裁断します。
表地パターンと同じパターンを使用します。裏地パターンも一枚パターンにすると、表地と合わせやすくなります。裏地の地の目を逆にすることで一枚パターンをそのまま裁断することができます。
裏地も一枚パターンにすると脇線を縫製する工程がなくなり、より簡単になります。
裏地を「わさ」にし、わさと後身頃の背中心を重ねて配置します。
裏地を裁断する
裏地を裁断します。裁断後、チャコペーパーで印を付けていきます。印の場所は縫製時に合印になるところです。
裏地を少し小さくする
表地と同じパターンを使用しているため裏地を少し小さくします。裏地を少し小さくすることにより縫製後、裏地が外側に出ることがなく綺麗に仕上がります。
C-4 フェイクファーの縫い代を作る
フェイクファー縫い代の付け方
フェイクファー生地を縫製するには縫い代を作ることが大切です。
そのまま縫い代の毛をカットせずにミシンで縫い合わせることもできますが、ミシンをかけた後、縫い代を割ってアイロンもかけにくく、また縫い代に厚みがあるのでおさまりが悪くなります。
縫い代1㎝幅の外側、0.5~0.7㎜幅の毛をカットします。カットすることによりミシンをかけた後、アイロンもかけ易く縫い代がゴロゴロせずにおさまりが良くなります。
ゴミ袋の中で作業しょう
どうしても毛が飛び散ります。マスクを付けてゴミ袋の中で作業しましょう。
余分な毛を取り除くためのクシ、掃除機もご用意して下さい。
- 縫い代1㎝、その半分の0.5~0.7㎜幅の毛並みをカットします。
- メッシュ地が見えるように毛の根本を指で押さえます。
- ハサミの刃先をメッシュ地と毛並みの間に入れて少しずつ毛の根本を切りましょう。
- フェイクファー生地の外周すべてに縫い代をつけます。
D フェイクファージレの 縫製
さぁ 縫いますよ!
(1)表地のファー(毛)をクシで整えます。縫い代に掛からないように内側に入れていきます。
(2)表地(フェイクファー)と裏地を中表で重ね合わせ、まち針でとめていきます。
毛がはみ出さないように注意してね!
(3)前肩線と後肩線を開けておく。
肩線は最後に縫い合わせます。
(4)裾を開けておく。後でひっくり返すため。
上記以外のところは、生地の周囲全体をまち針でとめていきます。
ミシンのかけ方
縫い代1㎝のところにミシンをかけていきます。フェイクファーの毛を0.3~0.5㎜縫うことになります。服の表側からメッシュ地や裏地が見えないようになります。
縫い代に厚みも出ずキレイに仕上がります。
(5)縫い代1㎝でミシンをかけます。
裾の開けておくところ、肩線以外全てミシンをかけていきましょう。
ミシンかけ頑張りましょう!
(6)ミシンをかけた後の縫い代を0.5mmカットします。
(7)カーブのところに切り込みを入れます。
アームホールや後首ぐりも同じようにしましょう。
(8)切りしつけをはずしていきます。
(9)カットして残った毛やほこりなどを掃除機で吸い取りましょう。
中表を引き出す前にキレイにしておきましょう。
(10)開けておいた裾から表地を引き出し、ひっくり返えします。
首ぐりや裾のカーブなどを引き出しキレイに整えましょう。
(11)毛にあたらないように裏地にアイロンをかけていきます。
裏地の外周、全てにアイロンをかけおさまりよく整えしましょう。
(12)前肩線と後肩線を合わせます。
(13)肩線をミシンで縫います。
(14)縫い代の余分なところをカットします。
(15)肩線の余分な縫い代をカットします。
縫い代を割り、アイロンを当てます。
(16)肩の裏地を合わせます。
表地の縫い代を隠す様に裏地を上から重ねます。
前身頃側の裏地が下になるよう、後身頃の裏地が上側にくるようにします。
(17)肩線をまつり縫いします。
なるべく細かくまつり縫いしましょう。
(18)裾上げする。
ひっくり返すために開けておいた裾を折り上げます。
毛が内側に入らないようにしましょう。
裾に裏地を合わせ、アイロンをかけて整えます。
(19)裾ラインをまつり縫いします。
フェイクファー生地の根本をすくいながらまつり縫いします。
なるべく細かくまつり縫いし、毛が内側に入らないようにしましょう。
スプリングホックはお好みでどうぞ!
(20)スプリングホックを3ケを用意します。
(21)スプリングホックをつけます。
ホックのオス側は生地からはみ出ないように、ホックのメス側は生地より0.2㎜ほど出るようにつけます。
フェイクファージレの完成
ぜひ 秋冬のちょっと肌寒い日に羽織ってコーディネートをお楽しみください!
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